「科学と人間の不協和音」「科学の横道」 書評
「科学と人間の不協和音」「科学の横道」読了後の感想。
池内了「科学と人間の不協和音」は、科学者である池内氏による現代科学構造への批判の書。
この著者は以前より、科学についての問題を批判する書をいくつか出している。原発事故によって、日本人の科学に対する信頼は失われた、という。その是非は個人的に疑わしいと思う(原発関係の学者の信頼は相当低下したと思うが、他の分野の学者の信頼性はそれほど変わっていないように思う)が、ともかく、科学と社会はどう付き合っていくべきかを語っている。科学者も人間だから、どうしても社会の要請の影響を受けざるを得ない。つまり、「役に立つ科学」ばかりが要請されがちである、という問題については賛同する。他、ちょっと科学者批判が極端という印象を受ける部分もあるが、その位のほうが科学者からの科学批判のメッセージとしては妥協がなくていいか。
これが、非科学者の意見なら角が立つと思うが、このレベルの過激な批判は日本の批評ではあまり見られないものであるから心配の必要はないだろう。
「科学の横道」は、科学とあまり関係無さそうな専門家などと、科学のことをどう捉えているかを尋ねたり、科学を文化にするにはどうすればいいのかを話しあったりしている本。
上記池内氏の本にも記載があったが、一般人に科学を親しみやすくするには、科学的事実ばかりを伝えるのでなく、科学に関する物語を利用するべきでないかという点は、まさにその通りであろう。しかし、大半の対談は、専門的な部分が多く理解できない部分や、あまりテーマと関係なさそうな議論など、やや迷走気味な部分もあった(だから「科学の横道」なのだと言われそうだが)。
一番面白いのは、やはり科学好きの文学者との対談であったのは、さすが文筆家だと思わせる。