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『ニューヨークタイムズ』神話―アメリカをミスリードした“記録の新聞”の50年 書評

ニューヨークタイムズ』神話―アメリカをミスリードした“記録の新聞”の50年、ハワード・フリール、リチャード・フォーク著、読了後の感想。

これは、かなりラディカルなニューヨーク・タイムズ批判の書である。日本の新聞(特に朝日新聞)への批判の書はよく見かけるが、アメリカの新聞を批判する書籍は初めて読んだ。やはりこのようなことは日本人には難しいか。しかし、日本でもよく引用され、世界的な影響力のある大新聞、ニューヨーク・タイムズについて知ることは確実に必要なことであろう。一般的にタイムズはリベラル系の新聞ということになっているが、著者たちは多くの記事引用を駆使して、実は保守派にかなり気を使って紙面を作っていることを示す。そして、半世紀にわたった調査を行なっているのだが、特にイラク戦争などについて、はじめは賛成をほのめかす言動を繰り返しながらも、開戦直前になって反対であると主張をして体裁を整えたといった時系列的な分析など、非常に興味深い。著者たちの批判の根源にあるのが、リベラルに見せかけた論説のなかに、国際法の観点が抜け落ちているタイムズの姿勢である。戦争行為を行うにあたって、当然ながら順守すべき国際法について、アメリカが国際法違反の行動をとっているのではないかという議論を、タイムズは殆ど問題にすることはなかった。それは、国際法を持ち出せば、戦争を肯定することが困難になることが理由ではないかと思われる。タイムズも結局は商業紙であり、保守派も安心して読める内容でなければいけないのだ。よって、はっきりと決着がつくような論点は持ち出し辛いのかもしれない。また、バランス報道のような体裁を取りながら、実際は国際的問題について、アメリカに都合のよい部分を強調し、不利な部分は小さく扱ったり曲解したり見なかったりしている例を示し、批判している。

結局、「公平中立」「バランス報道」なんて幻想に過ぎない上に、どちらかの立場に立って主張することから逃げ、どちらとも取れる言動に終始してしまうことを正当化してしまうということがよくわかる。

著者らの批判の全てが妥当なのかはわからないが、タイムズをよく知らずになんとなく神聖視している私達日本人こそ、この本を読むべきであろう。