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「貝と羊の中国人」 「現代アート入門の入門」「はじめての言語ゲーム」書評

「貝と羊の中国人」 「現代アート入門の入門」「はじめての言語ゲーム」読了後の感想。

加藤徹「貝と羊の中国人」は、批判と擁護のバランスのとれた中国文化論。貝=貨幣と羊=遊牧民としての中国人の思想。日本との言語比較、人口変動の比較、テリトリーの観念、英雄の観念など、比較文化論でもある。ただし、比較文化論は得てして構造を単純化しがちなので、鵜呑みはできないだろう。

山口裕美「現代アート入門の入門」は、日本の現代美術とその周辺について書かれた本である。

世界の現代アートの概要が書かれているのかと思いきや、現代の美術館や美術産業、日本の美術需要の記述と、日本の現代アーティストの話がメイン。外国の現代アートへの言及は少なく、代わりに日本の現代美術家たちの情報は多い。著者はNPOなどで日本の現代美術を支援している人間なのでこうなったのだろう。内容は主観的な要素が強いが、芸術への情熱が伝わってくるし、気軽に読める内容でもあった。日本の現代芸術家の名前も少し把握できたし、そこそこ面白く読めて、当たりだった。

橋爪大三郎「はじめての言語ゲーム」は、ウィトゲンシュタインの後期思想のメインである言語ゲームの話。ウィトゲンシュタインの来歴、前記思想の概説もある。また、ウィトゲンシュタインはもともと数学や論理学をやっていたこと、懐疑論と戦い続けていたこともわかった。懐疑論に逃げる人間よりも、戦う人間の方が魅力的である。

言語ゲームという発想の魅力も伝わってきた。著者は社会学者なので内容が正確かは少し疑問もあるが、とても楽しんで読めたので、この著者の本はまた読みたい。