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クリプキ―ことばは意味をもてるか 書評

クリプキ―ことばは意味をもてるか、飯田 隆著、読了後の感想。

哲学書に入るが、非常に薄い本で、分量としてはわりとさくっと読める。

内容もわかりやすく、私のような哲学初心者には向いている。ただし、分量とわかりやすさの代わりとして、当然ながらソール・クリプキについての全体を概観するような内容にはなっておらず、クリプキの「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」についての考察が大半を占める。

私は哲学初心者とはいえ、有名な議論はある程度把握しているつもりであるので、この本で紹介されているクワス算だとかグルーだとかは知っている。以前知ったときも、意味はわかってもいまいち納得がいかなかったが、このわかりやすい本で読んでも相変わらず納得できなかった。アメリカの分析哲学の系譜に含まれる人物であると理解しているが、分析哲学でもやはり哲学だなあと思わされる。文脈から意味を定義することの不可能性を問うているのかと思うが、例が不自然すぎて、そんなことあるのか?と疑問に思ってしまうのが難点。現実的でいい例はないものか。共同体が同じ認識を持つことで意味は定義できなくても共有し得るという「懐疑的解決で」一応解決を図るところが結論を放棄したようなポストモダンとの違いだろうか。