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「今こそアーレントを読み直す」「私は花火師です」「評論家入門」 書評

「今こそアーレントを読み直す」「私は花火師です」「評論家入門」読了後の感想。

仲正昌樹「今こそアーレントを読み直す」は、分かりやすいハンナ・アーレントの解説書。仲正昌樹氏は、割りと売れっ子の評論家かと思うが、多作ゆえにちょっと雑じゃないかと思うような著作もある。しかしこの著作は、アーレントからの引用が少ないゆえに、アーレントを使って著者の言いたいことを言っている感はあったが、その分読みやすいアーレント解説になっていると思う。とは言え、やはり本来のアーレントを知るには本人の著作を読むべきだろうが。全体主義を防ぐためには、意見の多様性が重要である、という基本を押さえておく。

フーコー「私は花火師です」は、フーコーの講演などをまとめたもの。「知の考古学」は挫折したが、この本は講演が中心なので分かりやすくて、フーコー入門に向いていそうだ。しかし、知と権力の関係を読み解く手法の価値は認めるが、全てが断罪口調で、読んでいてなんだか疲れる。

小谷野敦「評論家入門―清貧でもいいから物書きになりたい人に」は、評論とは何かを語っているような語っていないような本である。この著者の本は割りとどれも面白いし本作も面白かったが、ときどき雑な感じもする。ただ、とにかく著名な学術本や学者、評論家などを批判しまくる姿勢は徹底していて、このような学者や評論家も何人か必要かなと思わせる(著者の批判にそれなりに同意できるからかもしれないが)。たいていの学者たちはこのような苛烈な批判はあまりしないので、貴重な人材だと思う。書名に関係ある部分としては、とにかく評論家で食べていくのは難しいということはよくわかった。