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「リアルのゆくえ」「神道の虚像と実像」「感染症と文明 共生への道」

「リアルのゆくえ」「神道の虚像と実像」「感染症と文明 共生への道」読了後の感想。

大塚英志東浩紀「 リアルのゆくえ おたく/オタクはどう生きるか」は、サブカルチャー批評家として影響力トップクラスの二人の対談本。ただ、両者ともそれほど高く共感していない身としては、口論しているという印象以上にはあまり覚えていない(読んでからしばらく経っているせいもあるのだろう。他の方のレビューを読んだりして思い出そうとしたが、殆ど思い出せなかった。)とりあえず、東はある種身も蓋もない現実論をこのような場では常に唱えており、「批評家はもはやそれほど影響力を行使できない」といい、大塚の主張を退ける。どうしても、議論として見たときには東の方が正しいように見えがちだが、東の論から生まれるものはあるのだろうかと疑問に思う。そして、以前の対談集と同様、世代間の違いのような怪しい議論も行われている。現代思想の批評家はそういうのが好きなのか?

井上寛司「神道の虚像と実像」は、神道の歴史的変遷について述べた本。

神道とは何か、よく考えるとあまり知らないことに気づいたため読んでみた本だが、改めてよくわからなくなった。著者によると、神道にはきっちりした理念などはもともとなく、日本の宗教観の一部を形成してきたが、それのみを信仰するような存在でもなかった。そもそも歴史的に神道は統治のための政治的イデオロギーの面が強く、宗教的要素は薄いし、体系的でもない。全体的に神道に批判的な書であると思われるので、他の神道に関する本も読んで整理したいと思う。

山本太郎「感染症と文明 共生への道」は、世界の感染症と文明の関係についての歴史と、今後の展望について綴った本。文明が進歩し、世界がつながるにつれて新たな感染症もやってくる。現代は、感染症を完全に撲滅することは難しく、共生していくことが必要ではないかと説く。ペストによって多くの人が犠牲になったことが、民主化への道につながったという話は、非常に深みのある話であった。つまり、労働者階級の人間が多数死亡することにより、労働者階級一人ひとりの価値が高まり、また悲惨なペストにより権威も低下したことも大きかったようだ。