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漫画・アニメ・ゲーム・音楽・・・ 日本のコンテンツ産業の市場規模をまとめる

最近、各種業界の市場規模を調べている。

市場規模を把握すると、普段は気づかない社会構造に気づけて面白い。

情報を整理して参照できるようにすると便利かと思うので、ちょっとまとめてみる。

日本のコンテンツ産業の市場規模と、そこから見えてくるものについて語ってみる。

 

コンテンツ産業の市場規模

前提として、コンテンツ産業全体の市場規模はいくらか。

デジタルコンテンツ白書2010では12兆円としている*1

コンテンツ産業の市場規模:12兆円 

これは、スーパーの市場である13兆円(2014年)と同じくらいの規模となる*2

スーパーと同じく、生活に欠かせないものとして市場が動いていることが伺える。

全体がわかった上で、個別のコンテンツ産業市場を見ていく。

 まずは漫画・小説など出版業界について。

出版の市場規模

まずは、出版物全体の市場規模 *3

ここでの関心はコンテンツ産業なので、出版業界全体の市場は割愛する。

出版物の市場規模:1.7兆円(2013年)

1996年の2.7兆円弱から大幅に下落し、1兆円近くも減少している。

書籍、雑誌ともに落ち込みが酷いが、特に雑誌の落ち込みが大きい。

書籍の市場規模:8000億円 (2013年) [1996年は1.1兆円]

雑誌の市場規模:9000億円 (2013年) [1996年は1.5兆円]

雑誌のようなニュース的需要の大きいメディアは、インターネットに取って代わられる部分が大きいことが原因だろうか。

 

電子書籍の市場規模

上記データは紙媒体だが、電子書籍の市場も見ておこう*4

電子書籍全体の市場規模:1400億円 (2014年) 

こちらは順調に市場拡大中。2011年の650億円と比べても、3年で倍になっている。

これからも当分は市場が広がり続けるだろう。

ただし、出版業界の落ち込みをカバーできるほどの市場となるかは不透明。

また、内訳として

電子書籍の市場規模:1250億円 (2014年)

電子雑誌の市場規模:150億円 (2014年)

となっており、電子雑誌市場も拡大しているとはいえ少なく、雑誌の売上減をカバーすることは不可能か。電子でも雑誌の勢いは期待できないようだ。

 

漫画の市場規模

上記を踏まえて、漫画の市場規模を見てみる。

まずは、紙媒体の漫画について *5

漫画市場:3600億円 (2014年)

1993年の5700億円から下落。ただし、コミックス市場は殆ど下落が見られない

上記データにおいて、コミックス市場は1993~2014年にほぼ2200億~2500億円の間で推移しており、近年は2300億円を大きく超えることはないが、それでも200~300億円程度の下落にとどまる。

コミックス市場規模:2300億円(2014年)

これに比べて、漫画雑誌は落ち込みが激しい。20年前の3分の1近くに落ち込んでいる。

漫画雑誌市場規模:1300億円 (2014年)  [1993年は3300億円]

コミックスより大きかった漫画雑誌市場は、2005年に逆転されて以来、その差は広がるばかりとなっている。

漫画雑誌市場は、2005年以降ほぼ毎年、前年比90~95%となっており、このペースで行くと2020年までには1000億円を落ち込む

マンガ業界のコミックス重視傾向は、強まることはあっても弱まることはないであろう。漫画雑誌で読んで面白かった漫画のコミックスを買うという購買行動はマイナーになっていくのだろうか。

 

電子書籍の漫画市場

次に、電子書籍の漫画市場を見てみる。

以下は、「電子書籍市場の約8割がマンガという法則」に基づいた推測値だが、

電子書籍の漫画市場:1000億円(2014年)

と算出されている*6 *7

今後の電子書籍漫画市場は、紙の漫画雑誌市場よりも大きく、重要になっていくだろう。

 

小説の市場規模

同じく出版市場の一部である小説の市場規模を見てみる。

・・・と思ったのだが、なんと、小説の市場規模データが見つからない。

どうやら、出版市場は公表されていても、漫画以外の書籍市場規模はあまりデータ化されていないようだ。

よって、小説以外のジャンルも恐らくデータが存在しないだろう。

博報堂が出している推定市場規模をもとに小説市場を割り出してみる*8

すると、漫画・小説の推定市場規模は7800億円とある(2011年の調査)

ここから、漫画市場3900億円(2011年)を引いた額が推定の小説市場規模となる。

小説の市場規模:3900億円(2011年頃)

 小説市場は漫画市場と同等ということになる。

 

ライトノベルの市場規模

小説の中でも、近年勢いが感じられるライトノベルの市場規模はどうだろうか*9

ライトノベルの市場規模:320億円(2011年) 

意外なほどに小さい。他に、2014年は225億円との情報*10、330億円との情報*11などがあるが、恐らく300億円程度であると考えられる。

これは、補聴器業界の市場規模(310億円:2014年)とほぼ同等である。

また、上記情報によると、文庫本におけるライトノベル市場は2割程度を推移している。

 

一部のライトノベルが爆発的にヒットし、アニメ化などでも話題になるため大きい市場であると錯覚しがちだが、一部のみが大きく売れているだけで、大半の作品はあまり売れていないのだろうか。あるいは、対象者が基本的に若年層に限られており、高年齢層には届いていない結果かもしれない。

次に、アニメ業界を見てみる。

 

 アニメ業界の市場規模

 アニメ業界の市場には、ユーザーが支払った金額推定である広義の「アニメ産業市場」と、アニメ制作会社の売上合計である「アニメ業界市場」のデータがある。

それぞれの規模は以下となる*12

アニメ産業の市場規模:1.5兆円(2013年)

アニメ業界の市場規模:1800億円(2013年)

 アニメ産業はかなり大きく1.5兆。ここには、「TV放送・アニメ映画・DVD・動画配信・アニメグッズ・音楽・海外アニメ・パチンコ・パチスロ」などの売上全てが含まれる。

パチスロ関係について言えば、近年やや伸びており2013年で2400億円。

おおよそ1.5割以上がパチスロ系であり、アニメファンはパチスロに感謝すべきかもしれない。

ちなみに、よく話題になるDVD等のビデオ売上は1100億円前後であり、市場の1割にも満たないため、ビデオ売上だけで売上を語ることの問題点が伺える。

なんにせよ、1.5兆円とは大産業の一つには違いないだろう。

にも関わらず、アニメ制作会社の市場になると、1800億円しか無くなってしまう。

このデータを見るとどうしても、よく指摘される「中抜き」の問題がちらつく。

このあたりに、若手アニメーターの薄給問題(動画マンは年収110万円という状況)の理由があるのだろうか。

しかし、市場の推移はアニメ業界もアニメ産業も安定しており、大きく上がりもしなければ下がりもしない状況。他のコンテンツ産業を考えると、なかなか固い業界といえそうだ。

次はゲーム業界。

 

ゲーム業界の市場規模

ソーシャルゲームの隆盛もあり、コンシューマーゲーム業界にはあまり元気が感じられないが、実態はどうか。以下、2014年データ*13

国内ゲーム市場規模:1.2兆円

コンシューマーゲーム(家庭用ゲーム)の市場規模:4000億円

ソーシャルゲームアプリの市場規模:7200億円

PCブラウザゲームの市場規模:700億円

コンシューマー市場よりも、ソーシャルゲームの方が市場が大きくなっている。

しかも、ソーシャルゲーム市場は毎年伸び続けており、来年も増加する見通しだ。

 ゲーム業界がソーシャルゲーム重視になっていくのも必然というところ。

ただし、誤解している方も多いが、コンシューマーゲーム市場のうち、ハードウェアを除外したゲームソフト市場は、それほど減少しているわけではない

2005年に3000億円ほどの市場が、現在は2500億円ほどになるなど、じりじりとした減少は見られるが、他のエンタメ市場と比べると、まだ健闘している方だろう。

むしろ問題は、据え置き機を中心に高画質化による開発費の高騰を招いている点であり、市場が増加していないのに一つのゲームにかける費用が増加すれば利益が減少するのは当然だ。この構造が変わらない限り、ゲーム業界はソーシャルゲームシフトをせざるを得ないだろう。

艦これで注目のブラウザゲーム市場はそれほど大きくはないが、これからの伸びに期待。

 

音楽業界の市場規模

CDが売れないとの声が大きい音楽業界だが、音楽ソフト・配信市場は以下の通り*14

音楽ソフト・配信の市場規模:3000億円(2014年)

この金額は、CD売上だけでなく有料音楽配信などの売上も含む。

また、世界全体における音楽産業の市場規模は1.9兆円で、日本は全体の16%を占める。

金額だけで言えばかなりの音楽大国だが、日本の音楽は海外で殆ど売れないことで知られており、日本市場が萎めば世界の推移に関係なく沈むことになる。

そして、市場そのものは1998年の6000億円をピークにして下落を続けており、下落が止まる気配は無い。

有料音楽配信は現在のところ、売上減のブレーキとしてはパワー不足。

1998年が高過ぎるという点はあるにせよ、それから17年で市場が半分になっているのは厳しいものがある。

朗報もある。近年は音楽CDが売れないということは多く指摘されているが、それとともにライブでの収入が重要になっている点もよく取り上げられる。

そこで、音楽ライブの市場規模を見てみる*15

音楽ライブの市場規模:2750億円(2014年)

なんと、現在の音楽市場に迫る勢いだ。しかも、2008年の1100億円から近年急激に伸び続け、6年で市場が2倍以上になっている。

この伸びを見る限り、あと1~2年で音楽ライブの市場が音楽ソフト・配信市場を追い抜くだろう。

ライブの場合はコンテンツ産業と言っても場所と人件費などが多くかかるためスケールしづらいところはあるが、これだけ伸びているのは音楽業界にとってかなり大きいことだろう。

近年、Youtubeに人気の音楽を配信してファンを増やす戦略を取っているアーティストが増えている。その理由は、この市場推移を踏まえれば、CD音源を渋るよりもファンを増やしてライブに来てもらう方が重要であることから、必然的な流れであることが分かる。

 

映画業界の市場規模

映画館の興行収入は以下となる

*16

映画館の興行収入市場規模:2100億円(2014年)

市場が小さくなっている印象を持っている人も多いかもしれないが、意外なことに2000年頃から2000億円前後で推移しており、特別市場は大きくも小さくもなっていない。

しかし、2000億円とは意外と小さいと思われた方も多いだろう。

上記数字はあくまで興行収入であり、DVD売上は入っていない。近年はビデオ収入がかなり大きくなっているため、以下に記載する*17

映画のソフト市場規模:5200億円(2013年)

実態としてはソフト市場(レンタルビデオとビデオの購入による売上)の方が圧倒的(2.5倍以上)となっている。それでも2005年の6700億円から徐々に下落してこの数字である。

興味深いのが、小さいながらも興行収入が安定しているのに対して、巨大市場である映画ソフトの市場が少しずつ減少していることだ。このあたりは、音楽業界の市場と似た構図になっている。

ただし、映画におけるソフト売上は、むしろ興行収入より圧倒的に重要である点は誤解してはならないだろう。

 

 あとがき

日本のエンタメ産業の市場規模を一通りみてきた。

個人的には、イメージと異なるデータが多く出てきたこともあって興味深かった。

全てのデータには参照元をつけているので、参考にして貰えればと思う。

以上。